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情報系学生が目指す国家公務員総合職#1(概要編)

はじめに

先日、僕は就職活動を終えて、国家公務員総合職として某省から内々定を頂くことができました。僕自身の体験が誰かの役に立てばと思い、体験記らしきものを書くことにしました。

情報系の学生でキャリア官僚を目指すのは、人数的な面で言えば珍しい方です。そもそも、情報系はメーカーやIT系企業から引く手数多であり、そちらに関心のある学生がほとんどでしょう。その状況下であえてキャリア官僚の道を選択するというのは、東大法学部や経済学部で最初からキャリア官僚を目指している学生が圧倒的に多いことを考えれば、不利な勢力かもしれません。理系という中で考えても、どちらかというとエネルギー系や農学系の学生の方が多いのではないかと思います。しかし、しっかりと戦略を練れば、情報系の学生がキャリア官僚を目指すことは決して無理ではないですし、場合によっては文系よりも攻めやすい可能性すらあります。その詳細は後々書いていくことから感じてもらえればと思います。そして、「この国を変えたい!」という熱い意志があるのであれば、専攻分野など関係ありません。

この記事では、少しでも多くの人に国家公務員総合職に対して興味を持ってもらえるように、基本的な制度面からしっかりと解説していけたらと思います。

なお、「理系から国家公務員総合職を目指した体験記」としてはいくつか先人が書いていらっしゃるものがあるので、参考にしている部分もあります。僕自身、就職活動中に読んでおり、有用な情報源として役立っていました。ここで紹介するとともに、感謝の意を表します。

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基本用語

話を進める上で最も基本的な用語をここで簡単に示しておきます。

  • 総合職事務系(事務官): 主に文系の学生が目指す総合職の区分。キャリア官僚の多くはこれ。
  • 総合職技術系(技官): 主に理系の学生が目指す総合職の区分。
  • 国総(旧国I): 国家公務員総合職の略。平成23年度以前は国家公務員I種と呼ばれていた。ただ単に国総・国Iと呼ぶ時は試験のことを指すことが多い。国総の試験は、国立大学を受験する時に例えればセンター試験に、民間就活に例えれば適性検査に該当する。大卒程度試験と院卒者試験があるが、院卒者試験は受験資格として受験時にM2以上であることが求められる。
  • 官庁訪問: 国総に最終合格した学生が内々定を得るために通る選考プロセス。各省庁に赴き、業務説明や面接を受ける。国総の合格者は「採用候補者名簿」に3年間記載され、この間であれば官庁訪問を行うことができる。
  • 秘書課: 大臣官房秘書課のこと。人事を担当する部署で、ここに採用窓口が置かれている省庁が多い。

事務系とはここが違う

既に理系で国家公務員を目指してきた人にとっては至極当たり前の話ではありますが、初めに言っておくべき極めて重要なことがあります。それは、「事務系とは異なり、予備校に通う必要はない」ということです(もっと言えば事務系で独学の人もいます)。東大法学部の人を見ていると多くがダブルスクールの話をしていたり、大学の最寄り駅には伊◯塾などの広告が出ていたりと、不安に思う要素があるかもしれません。しかし、事務系というのは一般的に言われるいかにもなキャリア官僚であり、多くの学生たちが志望する激戦区です。その中を勝ち残っていくためには、予備校に通わざるを得ないのです。それに対して、技術系は事務系ほど試験は難しくはないですし、採用枠に対して志望者の倍率が高いわけではありません。実際、技術系向けの講座が設置されている予備校などほとんどないでしょうし、技術系で予備校に通っていた人は見たことがありません。よって、民間就活と同様の対策をしつつ、大学のキャリアサポート室などで模擬面接をすれば問題はありません。

予備校に通わないと仲間ができるか心配と思うかもしれませんが、説明会などでよく会うメンツと絡んでいけば自然と仲間ができてきます。また、説明会で知り合った学生経由で、その学生の仲間にまで知り合いの輪を広げていくことも十分可能です。予備校に通っていない学生でも、予備校のゼミには顔を出して仲間を作っていることがあります。仲間ができれば、彼らと集まってファミレスで対策会を開くこともできます(僕自身も官庁訪問の直前期には事務系の学生に混じって参加していました)。彼らは激戦の事務系官庁訪問に向けて入念な対策をしていますから、有用なアドバイスをもらえると思います。逆に理系的な観点から彼らにアドバイスをすれば、Win-Winの関係を築けますね。

あとは、実際に働くようになってからの差は、相当先の話ではありますが「用意されているポストが異なる」ことでしょうか。よく言われるのが「事務次官は事務官・技官が交互になる」などといったものですが、その下の局長・部長クラスでも、どうあがいても技官は局長になれなかったり、逆に技官にしかできない部長ポストがあったりします。この辺りは省庁によって大きく異なりますので、「どうしても俺は事務次官になりたいんだ!」という人はしっかりと情報収集してください。ただ、事務官・技官のいずれにしても、官僚のピラミッドを登りつめるまでにかなり人数が絞られることは念頭に置いておきましょう。

国家公務員総合職志望のタイムスケジュール

国家公務員に限らず、就職活動には目安となるタイミングがあるかと思いますが、ここでは「いつ、何をきっかけに国家公務員を目指し始め、どのような過程を辿るか」に焦点を当てて、いくつかモデルケースを示して解説をしようと思います。

全ケース共通(説明会など)

初めて国家公務員を目指すことになるきっかけになるイベントとして、各省庁のインターンシップがあります。主に夏休みに開催され、いくつかのタームから都合のよいものを選べますので、気になったら試しに申し込んでみるとよいでしょう。多くの場合、大学の窓口を通して申し込めば選考なしで参加することができます。ただ、複数省庁への応募は控えるようにとされているので、省庁選びは慎重に行いましょう。ちなみに、僕は院進学の直前期に某省(内々定先とは異なる)の学内小規模説明会に参加したのがきっかけで国家公務員に興味を持ち、M1でその省のインターンシップに参加しました。

インターンシップで当該省庁に興味を持てたら、あるいは他の省庁が気になり始めたり、インターンシップに参加していなくても気にかかったりしたら、各省庁の説明会や政策シミュレーション(グループディスカッション演習のようなもの。政策ワークショップと呼ぶ省庁も)などに足を運んでみましょう。秋頃から多数開催されますが、2月あたりから参加し始めてもかなりの情報を得られます。実際、僕が内々定を得た某省の説明会に初めて参加したのもその頃でした。ただ、人気省庁の説明会は参加可否が抽選(抽選とは言ってない)で決められることもあります。そのような省庁を志望する場合は、特に早目に行動し、秘書課の人に目をつけてもらえるように努力した方がよいでしょう。

本当に行きたい省庁に対しては、説明会だけではなく職員訪問(OB訪問)も何回か行いましょう。政策メインの説明会では中々聞きづらい仕事の大変さや生活について聞き出すチャンスですし、官庁訪問のシミュレーション的な面もあります。訪問した職員の方は、官庁訪問当日に雑談に付き合ってくれたり、運がよければ面接官として出会ったりすることもあります。職員訪問の申し込み方法は省庁によって異なりますので、メールやFacebook, LINEなどの広報を確認したり、採用担当者に尋ねたりしてください。また、第1次試験合格発表日以降は「接触禁止期間」となり、月数回設けられた例外日を除いて職員の方に直接会うことができなくなりますので、うまく計画してください。接触禁止期間でも、例外日に職員訪問をするためにメールでアポを取るといった行為は問題ありません。

官庁訪問では、最低でも3つの省庁を訪問することができます。本当に行きたい省庁が1つないしは2つだとしても、保険としてあと1つはどこを訪問するか考えておいた方がよいでしょう。そのためにおすすめなのは、霞が関OPENゼミ中央省庁セミナー内閣人事局主催省庁共同説明会本府省合同業務説明会などの合同説明会です(霞が関OPENは合同説明会というより各省庁の説明会が同時開催される感じですが)。本当に目指している省庁の説明を聞くのはもちろんですが、省庁が一同に会しているので「別に本気ではないけど仮に行くとしたら…」という省庁を探すのにも役立ちます。また、省庁・区分によっては説明会で政策テーマなどの詳細に踏み込んだ業務説明を行っていないこともあり、そのような省庁・区分であれば合同説明会で概要をさらっておけば基本的なことは理解できてしまうことがあります。

学部卒で就職する場合

基本的には、事務官を目指す学生と同様のスケジュールになります。タイムチャートにすると以下のようになります。

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秋(平成28年度は9月から11月にかけて)には国総の「教養区分」の試験が行われますが、これは主に事務官を目指す学生が法律・経済などの区分の代わりに受験し、先立って官庁訪問の権利を得るためのものです(少し異なりますが、後述する「既合格者」の事務系版のようなものです)。これにより、翌年に民間就活と並行して国総を受験する必要がなくなり、労力が省けます。ただ、官庁訪問での扱いは事務系となり、法学部などのガチ勢と戦わなければならなくなることを考えれば、教養区分の受験は避けた方が無難でしょう。試験の機会が減ってはしまいますが、最悪の場合でも大学院に進学する手がありますからね。

試験対策に関しては詳しくは別の記事でまとめますが、試験勉強は遅くとも第1次試験の1ヶ月前あたりから始めましょう。民間就活の兼ね合いを考えるともっと早くでもいいかもしれません。平成29年度の場合は4月30日ですので、3月末あたりからになります。最終合格者発表日が6月下旬〜7月上旬ということなので、そのまま院進することを考えて院試勉強をするにもよい時期でしょう。国総向けに勉強したポテンシャルがあるので、院試勉強も捗るかもしれませんね。

修士を中退して就職する場合

割とイレギュラーなケースですが、何人かはいるようです。恐らく学部時代は院進を考えていたのに、学部から院に進学する頃に国家公務員に興味を持ち始めたパターンだと思うので、相当のスピード勝負になるでしょう。また、就職後の扱いも学部卒と同じになるかと思うので、1年のロスが発生することになります。「研究したくない」というよっぽどの強い意志がない限りは、修士卒での就職に向けて情報収集をゆっくりと行った方がよいでしょう。

修士卒で就職する場合

この場合、試験を受けるタイミングとしては2つ考えられます。

1つは、M2で院卒者試験を受験するパターンです。学部卒のケースがそのまま2年ずれたものと考えれば差し支えないです。

もう1つは、B4やM1で大卒程度試験を受験し、M2で官庁訪問をするパターンです。この場合、「既合格者向け官庁訪問」を行うことができます。このメリットとして、次のことが挙げられます。

  • 民間就活と並行して試験勉強の必要がなくなるので、民間就活との両立がしやすくなる
  • 民間就活の内々定解禁と同時期に官庁訪問ができるため、就活の長期化を防げる
  • 仮に不合格だったとしても、翌年以降の試験のための練習と捉えることができる

逆に、デメリットとしては初任給が学部卒と同じになってしまうことがありますが、これは昇級時に修士卒に揃えられるので、しばらくの辛抱といったところでしょうか。

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まとめ

今回の記事では、情報系の学生が国家公務員総合職を目指す上で必要な基礎知識や全体の流れについて解説しました。次回以降、国総の試験攻略や官庁訪問対策について紹介できればと思っています。